魔法使いサラバント

  

 
(「昔あるところに
恋人を亡くした
ひとりの
魔法使いがいた
彼が求めたのは
死者を甦らせる
禁断の秘法
領分を侵す者に
降りかかるのは
厄災のみと
識りながら
何故
人は求めるのか?
人智を超えた
魔神の力を…」)
 
 
吹き荒ぶ風は
砂を巻き上げて
若い旅人の
行く手を阻む
旅の道連れは
一頭の駱駝
砂丘(おか)を
乗り越えて
街へと向かう…
 
「魔法のランプ゚が
欲しくはないか?」
胡散臭い
髭の男が囁いた
 
薄暗い
路地裏での
駆け引き
彼は男が
持ち出した
条件を飲んだ…
 
 
(「ランプを擦ると
魔神が現れ
3つの願いを
叶えてくれると言う
願い事を
1つ譲るという
条件で
彼は
その在処(ありか)を
聞き出した
 
そのランプは
南西にある洞窟に
封印されているという
片足が悪いという
男の代わりに
彼は
穴の中へと
降りた…」)
 
 
砂漠の下には
大きな空洞
冷たい空気が
背筋を掠める
洞窟の奥には
妖しい祭壇
黄金のランプと
古びた絨毯
ランプを
手に取ると
洞窟が崩れた
 
「ランプを
早くこっちへよこせ!」
男が叫んだ…
 
(忘レモノハ
在リマセンカ…?)
 
暗い闇の中
懐かしい声を聴く
暖かな光
愛しい声を聴く
 
「貴方は
まだこっちへ
来てはいけないわ
遣り残したことが
きっとあるはず…」
 
暗い闇の中
懐かしい声が言う
暖かな光
愛しい声が言う
 
「失われたモノの為に
願うより今
目の前にある
モノを見つめて…」
 
 
目醒めれば
砂が巻き上がる
砂丘(おか)の上で
抱かれていた
黒髪の
美しい少女
泣きながら
微笑んでいた
 
「古の罪と罰の
輪舞曲(ロンド)
ランプに
閉じ込められていた
愚かな私を
出してくれた
御主人様
(マスター)
さぁ
願いをどうぞ
叶えましょう」
 
3つの願い
全て叶えたら
少女は再び
唯冷たい
砂の下で
幾千の
孤独に震える…
 
(「そして
彼は願った…」)
 
吹き荒ぶ風は
砂を巻き上げて
若い旅人の
行く手を阻む
旅の道連れは
二頭の駱駝
長い黒髪の
少女が一人…